以前、
ある方の自叙伝の執筆をお手伝いしたことがあります。
その方は、早くに亡くなられた旦那様が経営していた
ディーラーを引き継いでいました。
「お客様には
『ここが好きだから、いつまでもがんばって』と言ってもらってるけど、
年をとって仕事が大変になってきたし、
私は車もそんなに好きじゃないし、
もういつ引退しようかと思ってるの」とおっしゃっていました。
それでも、それまでの経験や思い出深いエピソードを伺うと、
私には、どうしても車が好きだとしか思えませんでした。
いくつかそういうお話を聞いたあとに
「車はそんなに好きじゃないとおっしゃってますけど、
きっと本当は車がお好きなんですよね?」と聞くと、
その方は虚を突かれたように黙ってしまいました。
そしてしばらく沈黙したあと、
「そうね、そういえば私、車が好きだったのね。
だからこの会社をなくしたくなくて、
今までがんばってきたのね」
と言い、涙を流していました。
そう自覚されたあとにその方が発したのは、
「ああ、だから◯◯をやろうと思ったんだった」
「◯◯をやったのは車が好きだったから」
と、仕事に対するポジティブな言葉ばかり。
それまでは
どんなに仕事が大変だったかに焦点を当てていた自叙伝は、
その中身を大きく変えることになりました。
そして、その自叙伝を配ったあと、
お客様から
「◯◯さんの考え方にすごく共感できたよ。
これからもよろしく」という声がその方の元に相次いだそうです。
私にとっても、とてもうれしい声でした。
いつ引退しようかと考えていたその方は、
もうしばらくは仕事を続けると決め、
実際にそれから5年近く、
それまでと同じように仕事をし続けたそうです。
代替わりをされた今も、
「◯◯のときはあの店に行くよ」というお客様が多いと聞きます。
それはきっと、
あの方が一生懸命伝えてきたあの会社の世界観が
お客様に受け入れられているからなのです。
ストーリーの種になるものに
自分自身で気づいている人は、決して多くはありません。
そんなときに私が注目するのは、
相手が言いよどんだり、逆にあまりにもサラッと流したりすること。
ご自分でも気づかないところに
私がコツンと引っかかることで、
相手の中に潜んでいるエピソードに気づくことができます。
そしてそれを魅力的なストーリーに仕立てるために、
これまでに身につけた質問力を活かしてあなた自身を掘り下げて、
あなたのエピソードを編集していきます。
自分がどんな人間なのかをわかりやすく説明し、
もっと輝けるエピソードを含み、
自分の代わりに雄弁に語る文章を書くことで、
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